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田中さん似顔絵 下田常三画

  田中由生子(たなか ゆうこ)
      


               「フル回転のピアニスト」

 2台のグランドピアノが並んでいる。部屋のコーナーには正方形のテーブルがあり、L 字型に椅子が置かれ、気持ちよさそうなクッションが「どうぞお掛けなさい」と招いているような気分にさせられる。田中由生子さんのレッスン室だ。
 壁には何枚かの絵が掛けられ、その中に一枚白黒の写真が目を引く。まだ足が床に届かない少女が真剣にピアノを弾いている。ピアノ発表会の演奏写真だ。ピアノは、4歳から始めたが、今思い出すのは、お母様が怖かったことだと言う。田中さんの今日に至るピアニスト人生の出発点である。

 鎌倉は、材木座で生まれ、小袋谷に移り、今泉台に住んで48年になる。中学、高校と北鎌倉女子学園の音楽科で学び、桐朋学園音楽大学ピアノ科を卒業した。
同時に母校の教師となり、教師1年目に指導した生徒を音大に進学させた。以来ずっと専門家志望の後進の指導に当たっているが、「芸術は自分との競争であり、戦いでもある」と、生徒にも厳しい先生だ。
 自宅でもピアノ、ソルフェージュ(聴音)などのレッスンをしている。その他に北鎌倉女声合唱団、横浜市青葉区のお母さんコーラスなどの指導をし、また、鎌倉合唱連盟の理事を8年間務めた。これまでフル回転でこれらの音楽活動を大切にこなして来た。音楽科のある中学、高校が住まいの近くにあり、それが職場となり、実にラッキーだったと振り返る。
 
 これまでに数回にわたり外務省の派遣で旧ユーゴスラビア、ウイーン、そしてウルグアイ、アルゼンチン、ブラジルなどを訪れ、ピアノを演奏している。


エルダー泉レッスン風景


エルダー泉メンバー

 町内会では、防災委員をし、「緑のコンサート」の活動に協力しているが、2年前の5月からは、男声合唱団「エルダー泉」の指導に当っている。合唱は、歌の練習もさることながら、団員どうしが喜怒哀楽を外に出し、親しい間柄になって初めて良いハーモニーが生まれるところから、もっともっとコミュニケーションしたいと、団員の方々を自宅に呼んでお茶を飲みながらおしゃべりをする努力もしている。
合唱団員は礼儀正しい紳士が多く、女子中高生やお母さんコーラスとは少々様子が違うが、独特の楽しさがあるようだ。目下、4月23日の神奈川男声合唱協会の演奏会にむけて練習に励んでいる。

 田中さんは初めてお会いしても、前からの知り合いのような温かい親しさを感じさせるお人柄だ。「人が好き」で、演奏も誰かと一緒のアンサンブルを好み、チェロ、バイオリンとのトリオなどを楽しんだこともある。そんな時はいつも世話役ではないかと思われる。
 料理と車の運転、そして、麻雀、映画、海外旅行などが趣味である。だから、麻雀仲間には料理も場所も提供することになる。因みに、なりたかった職業のひとつは「旅館のおかみ」で、今すぐでもピッタリの貫禄がおありだ。これからもずっと、人の為に何かに貢献したいと、ピアニストとしての抱負を語って下さった。
          (2016年2月)




 









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